子どもの英語を伸ばすカギ
近年、ますますのグローバル化や大学入試の4技能化、そして小学校への英語授業の導入を受けて、子どもを英語教室に通わせるお子さんが激増しています。
しかも、英語を始めるのは早ければ早いほどいいという一部の風潮もあって英語学習の早期化は過熱する一方です。
そのことが良いことか、悪いことか、一概にいうことはできません。
ある専門家は、外国語の学習は早く始めるほど良いといい、
一方で、別の専門家は母国をある程度身に着けてからのほうが外国語の学習効果は高いと言っています。
いったい、どれを信じたらいいの?
子どもにいつから、どんな方法で英語を学ばせたらよいか、本当に親の悩むところです。
この問題に絶対の正しい答えはありません。
学習の効果は、子どもの性格や特性、頻度、教える人との関係性、家庭環境、などたくさんの要素が複雑に関わりあっているからです。
しかし、そのたくさんの要素の中でも、その中で一番と言っていいほど大切なカギがあります。そのカギは何でしょう?
それは、家庭環境の大事な要素である、親の態度です。
子ども向けの英語教室を長年経営し、たくさんの子どもを見てきた経験から言えることのひとつは、
子どもの英語が伸びるかどうかのカギの1つは、間違いなく親が握っている
ということです。
この記事では、子どもに英語を習わせている親がやりがちな5つのNG行動をお伝えし、それをプラスの行動に変える方法をお伝えします。
親がやりがちな5つのNG行動
1.習った単語を言わせる
レッスンから帰ってきた子どもに、
「今日は何習ったの?習った単語、言ってみて!」
って言っていませんか?
子どもはレッスンの中で、言葉を知識として覚えてくるとは限りません。
先生とのコミュニケーションの中で、道具として英語を使う練習をしているのです。
もちろん、その時間でたくさんの言葉を覚えるでしょう。
でも、それは、「出して見せて」と言われて、「はい、これです。」と言って見せられるものとは限りません。もちろん、上手に言ってくれることもあるでしょう。でも、そうでない時もありますし、逆に言うと、それができたからOKというわけでもないのです。言語の学習=単語を言う、ではないのです。そんな単純なことでなく、ある言語を使えるようになると言うのは、自分の中にシステムをインストールするようなものなので、全体として上手く動くように、たくさんの情報をいろいろな形でインプットし、アウトプットして試しながら、試行錯誤し、長い時間をかけて、やっていくことです。その日に習ったことを切り取って言わせてみて、できた、できないと一喜一憂することに意味はありません。
さらに親に、「今日ならったことを言ってみて」と言われる子どもは、チェックされているような気になるかもしれませんね。
上手くいえなかった子どもに「ちゃんとならったのー?」「しっかり覚えてきて!」というのもよくあるパターン。もしかしたら、その親ごさんの中に【英語は覚えるもの】という意識があるのかもしれません。だとしたら、それは間違いです。覚えるだけの英語では実際に使えるようにはなりません。
もし、「習った単語言ってみて」にお子さんが上手に答えたら、それは親ごさんにとっては一時の安心材料になるかもしれませんが、ただそれだけ。それだけでは十分でないことを覚えておきましょう。また、いつもそうきかれることで、子どもの英語学習が暗記にとどまってしまわないように、気をつけておきましょう。
こんなふうに変えてみよう
→英語の発話を定着させるには、自然に使えるような場面を作るのがもっとも効果です。「何をならったの?」ときいて言わせるのでなく、子どもがならった言葉を自然と口にるすような場面を意識して作ってみましょう。そのためには、子どもが何を習っているのか、わかっている必要があります。
子どものが使っているテキストを見ていますか?
今、どんなことを英語言えるように練習しているのか、把握してしますか?
子どもが「それ、知ってるー!」「それ、ならったー!」と言うような場面をいかに作り出して、発話を促すか、それを意識してみてください。
そして、上手に使えたときは、「すごいねー」「言えたねー」「そんなふうに言うんだねー」と、たくさんほめることをお忘れなく!
2.発音を直す
子どもは耳から聞こえてきた音をそのまま発声します。それが強みです。大人は、英語を目で見て読むことに慣れていて、ついついそれに引きずられた発音をしてしまいます。長年のカタカナ英語が染み付いている人も多いですね。
それに対して子どもは、先入観なく、聞こえた音を素直に真似するので、小さい頃から始めた場合、かなりネイティブに近い発音を身に着けるケースが多いです。
(それが是非とも必要なことかどうかは以下の記事をご覧ください。)
ただ、時によっては、大人の耳できいた場合、「間違ってる?」というような発音をすることもままあります。
たとえば、purple と言う単語。
大人は、パープルというカタカナを知っているので、それに近い発音をする人が多いです。が、本来の英語の発音はパープルとは、かなりかけ離れた音です。途中の r の音があまり口をあけずに発声され、くぐもった音になるからです。
日本語にないこの音は、子どもにも出すのが難しい音なので、中には、本来の音とは違うように聞こえる発音になる子も少なくありません。
そういう場合、親ごさんの中には、「違うよ!パープルでしょ!」と言って、発音を直そうとする方がいます。
でも、私はその必要はないと思っています。
子どもは、耳できいた言葉をそのまま再生しようとしている途中なのです。
その時点で、多少おかしく聞こえても、無理に矯正する必要はありません。
その矯正の過程でかえって、日本人特有のカタカナ英語になってしまうことも多いからです。しかも、子どもの時点で完璧な発音ができる必要はありません。子どもがたどたどしい日本語を話していた頃を思い出してください。あるいは、あなたのお子さんはまだたどたどしく日本語を話しているかもしれませんね。
タ行の音が上手く言えなかったり、エレベーターをエベレーターって言ったりしてませんでしたか?まだ言葉を使う練習をしていたんですから当然ですね。可愛かったでしょ?いつまでたってもそんな話し方だったら問題ですが、それはいつの間にか矯正されて正しい発音になっていくものです。
母国語でさえそうなんですから、ましてや外国語だと正しい発音に行き着くまでに多少の支障があるのは当然です。「それ、おかしいんじゃない?」って言って、子どもの自信をなくすことがないよう、焦らずに、長い目で見てあげましょう。
こんなふうに変えてみよう
→一つ一つ、子どもの気になる発音を矯正するのはやめましょう。正しい音を何回も聞くことで、そのクセは自然になくなることがほとんどです。親は、子どもが正しい音、自然な英語の音を聞く機会をできるだけ増やすことを心がけましょう。
3.理解していない英語を聞き流しする
子どもが英語ができるようになるように、特にリスニングが上達するように、という思いから、とにかく、たくさんの英語の音に触れさせようと、聞き流しという方法で子どもに英語を聞かせている、という親の声をよく聞きます。
確かに、英語の上達には量が大切。いかにたくさんの英語をインプットするかは、とても大切な視点です。
ただし、ただやみくもに英語を流しているだけでは、ただのBGMに過ぎません。それをすることで、英語の上達につながるには、ちゃんとしたやり方があります。
それを知らずに、ただ英語を流しているとしたら、それは単なる自己満足かもしれません。どれだけ聞いても勉強していない人がロシア語を理解できるようにならないように、どれだけ聞いても説明なしではお経を理解できないように、意味づけされていない音は単なる雑音です。英語を流しているときの子どもの様子を見てみましょう。耳に入っている音を、意味としてとらえていますか?言いかえるなら、耳だけじゃなく、頭も動いているでしょうか? それは子どもの様子を見ていたらわかりますね。
こんなふうに変えてみよう
→子どもの耳に入れる英語は本人が理解しているものを選びましょう。
ストーリーを知っているお話、ならったテキスト、など、その子の英語レベルで理解できるものが適しています。理解する過程を親が一緒に楽しめたら、なおさらいいですね。一緒に本を読んでお話を楽しんだ後に音声を聞くことなどは、親子で英語を楽しむのにおすすめの方法です。
4.試験の結果を気にする
英検をはじめとする試験を受験するお子さんが増えています。試験は、どれくらい上達したかを知るのには適していますし、試験の合格を目標にすることで勉強へのやる気が出るとすれば、受ける価値は確かにあります。
ただ、試験というものは点数や合否がはっきりと出るため、親がその結果を気にしすぎると弊害のほうが大きくなります。
「○○ちゃんは合格したのに、うちはだめだった」
「小学校までに、英検○級をとらせたい」
よく考えてみましょう。それは何のためですか?
子どもに英語を習わせているのは、今の時点で上手に英語を話してほしいからですか?
違いますよね?おそらく、大半の人の願いは、成長した時点で、英語ができるようになってほしいから、だと思います。
だとすれば、子ども時代の英語学習の目的は、英語の試験に合格することではないはず。先に言ったとおり、試験は、上手く利用すれば学習を大きく促進してくれる起爆剤になりえます。親は、その目的を履き違えないよう、目先の成績に振り回されて合格不合格に一喜一憂し、子どもに英語=勉強という意識を植え付け、そして、その延長として、子どもが英語嫌いになってしまわないよう、気をつけてほしいと思います。
こんなふうに変えてみよう
→英語の試験の目的を見失わないようにしましょう。ゴールは、子どもの英語へのやる気を高めることです。試験を受けることが本人の成長につながるような視点を持ちたいものです。試験を受けることを本人が決めたら、その決心をほめましょう。それに向けて勉強するプロセスを評価し、応援しましょう。目標を達成したら努力を認め、もし達成できなければ、次の成長につながるアクションを一緒に考えましょう。
5.「自分は英語は苦手」と言う
子どもに英語を習わせている人の中には、かなりの割合で、自分が英語ができなかったから子どもにはできるようになってほしい、と言う人がいます。
その思いは本当に理解できます。
自分にできなかったことを子どもに託すのは、親心の常ですね。
ただ、自分は英語は苦手と決め付けて、子どもの英語学習に関わらない、先生にお任せというのは、ちょっと残念なことです。
あまりにもよく言われすぎている言葉なので、あえて言うのも気が引けますが、
子どもは親の鏡です。親が「英語が苦手」と言って、英語に背を向けている家庭の子どもが英語が上手くなるでしょうか?それより、親も英語に興味を持って、子どもと一緒に楽しんで学ぶことができたら、そっちのほうが、子どもの学習は進むはず。
親の、英語に対する苦手意識や、難しいというイメージは、意外と子どもに伝わるものです。
そもそも、親の英語に対する苦手意識はどこから来たのでしょう?
おそらく、大半は「英語の先生が嫌いだった」とか「英語の授業がおもしろくなかった」とか大昔のイメージからきているはずです。そんな、昔の固定観念にとらわれて英語に背を向けていて、それが子どもの英語学習のマイナス要素になっているとしたら、本当にもったいないことです。
こんなふうに変えてみよう
→もし、あなたが英語に対して苦手意識を持っていたとしたら、子どもが英語を習っている今が、意識改革の大チャンス。英語が苦手になったのも、わからなかったのもあなたのせいではなありません。英語を楽しく学ぶ機会が与えられなかったのが原因です。でも、今からでもちっとも遅くありません。子どもと一緒に、英語への興味を取り戻す試みをしてみましょう。簡単なところ、自分が楽しめるものから、ちょっとずつやってみるのがポイントです。あなたが英語って楽しいな、と思えたとき、その思いが子どもに与える影響はとても大きいはずです。
まとめ
せっかく子どもに英語を習わせているのに、その学びを阻害するNG行動を親がとってしまっているとしたら、残念なことです。親の接し方で、子どもの英語の上達には大きな差がでます。親の行動を意識と行動を変えて、子どもの英語学習をサポートしていきましょう。